プロテインの堅実な選び方 1Muscle.com

 

96%のゆくえ

私が最初にプロテインを飲みだしたのは1980年代前半で、アミノ酸やペプチドも同じ頃だ。

同時にジムでトレーナーのアルバイトも始めたのでフィットネス業界、サプリメント業界の変遷は永いこと見てきている。

「筋トレを始めました!」と言ってジムに入会しても一年継続する人はまれだ。

ある研究では一年後もトレーニングを継続している人は4%に満たない。(Table 1, Sperandei 2015)

中でもウェイトロスを目的にジムに入会した人の継続率は低く、経営者側からすると「リスクグループ」とされている。(Practical Implications, Sperandei 2015)

パーソナルレベルのジムやクライアント関係はそこまで流動性が高くないがそれでも回転は速い業種だろう。

その結果、一般人や巷のエキスパートにおける「筋トレ」やサプリメントに関する知識・認識は永遠に「初心者向け」で十分となる。

従って私が書いているようなことは業界人やトレーナー向けということになるだろう。

辛辣だが・・・

こういった実際の知識(特にハーブなどの用法や使用者の伝聞の集積)はアカデミアで学べるモノでは無く、自分自身がサプリメントオタクとして探検を重ねないと無理だ。

私がマッスル&フィットネス日本語版の立ち上げ時に翻訳を任されたのは当時の東大の先生の翻訳を私が詳細に添削した際に「だったらお前が翻訳をやれ」ということになったからである。

1990年代には、約6年間ハーブ専門クリニックの真向かいにビジネスを構えていたことがあり多くの知見を得た。

それ以前に米国でのサプリメント・オタクたちと共に働いたり、実際に面と向かって会話した経験の蓄積は何物にも代え難い。

今でもそういった人たちがビジネスパートナーやメンターとなりカルトな製品づくりに役立っている。

辛辣に聞こえると思うが真摯に聞いて欲しい。

筋肥大をメインにトレーニングしている人の栄養に関する知識の繋ぎ方や使用語彙は画一化していて行き詰まりを感じる。

動画で見たことを真似ることに愉しみを感じているのならそれもまた良し。

しかし上を目指す人はそうではないだろう。

伸びしろがある状態なので、知見の幅を広げたら一気にプラトーが打開されるかも知れないし、他の面でも良いことがあるだろう。

 

意外に早くやってきた終末

私自身、オーガニック製品認証に関わったことがあるのでよく分かるが、カリフォルニア州のオーガニック農産物のクオリティは高く、それは健康オタクの数の多さにも現れている。

私は常々「人生で最も高価な買い物は家でも車でもなく病気である」と言ってきた。

それがどうだろう。

一般人にとって「健康」が高嶺の花となる終末的時代がもう来てしまった。

健康食品業界に30年もいると気づく、非常に面白い現象がある。

それは一部の人が持つ「今市場に出回っている製品が史上最も進化したものであり、今売れている製品が史上最高である」という錯覚である。

もちろん似たような現象はどの業界にもあると思われる。

こういった空気には何十年にもわたって時折触れているが、それでも触れるたびに唖然とする。

これは世代論では無く、多くの人間にあるサガであると感じる。

電化製品やテクノロジーに関してはその感覚があてはまると思うが、食料品や食材に関しては転落の加速度が恐ろしい。

私の生きてきた時代でさえ、私の前の時代に比べると自然の恩恵という面でははるかに劣っていると知っている。

「昔は良かった」などという感慨は一抹も無く、物心ついた時から日常的な環境劣化が延々と続いていると肌で感じている。

自分の世代よりも前の世代の食材や水、空気、食品、レストランの方が遥かに良かったであろうことは成人病や肥満爆発のデータ、プラスチックによる海洋汚染など、山積する証左から明らかだ。

 

4%の法則

身の回りに目を向けても自分が贔屓にしていたレストランや小売店の殆どがこの10年の間に消えて無くなってしまった。

ウォールマートが台頭してきた頃には既に街の小売店は瀕死状態で健康食品店共々軒並み廃業に追い込まれたが、一方で品質の高い食材を販売するホールフーズは業績を伸ばした。

しかしデフレ経済が進行するうちに、末期的症状として先ず人手が削られ、中間業者が消え、そして「モノを売る」という業種全般までもが統廃合される勢いになってきた。

そして最近では一般的な食品における「品質とモラル」が消え去りつつある。

ホールフーズもアマゾンに買収され、今や食品やサプリメント、プロテインにおける二極化さえも消失した。

食品において「品質とモラル」が消えゆくということは、癒着や隠蔽が増え、消費者の健康が考慮されなくなるということだ。

大衆に迎合するなら、もうそうするしか利ざやが造れないのだ。

前述したようにジムに入会して継続できる人のパーセンテージが4%であるということは、ウェイトトレーニングに限らず、ポリシーを貫ける人間は世の中に4%しかいないということかも知れない。

今の時代は二極化では無く「ブレない4%とそれ以外の96%」になったような気がする。

このデフレ時代にプロテインを選ぶコツはなんだろう?

貴方は貴方が食べたもの、見たもの、聞いたもの、つきあう人・・・であるとするなら、プロテインに限らず、96%を捨て、稀有な4%であらんとすることが逆に堅実な道なのではと思う。

 

出典

Reference:

Sperandei S, Vieira MC, Reis AC. Adherence to physical activity in an unsupervised setting: Explanatory variables for high attrition rates among fitness center members. J Sci Med Sport. 2016;19(11):916‐920. doi:10.1016/j.jsams.2015.12.522

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